悪いデザイン人殺す

ちょっと気味悪いタイトルですが、これホントの話。っていうのも、けっこう前に観たお馴染み『60ミニッツ』(CBS, “60 minutes”)での話。俳優のデニス・クエイドって知ってますよね?彼の双子のお子さんがある日生まれて間もない頃、医療ミスによって死にかけたという話でした。本当多いですよね、医療ミス。でも、この話の背景にあるのが、実はデザインなんて信じられないでしょう?

そもそも医療ミスは、全米で多発してる大問題なんですって。年間100,000人がこの医療ミスで亡くなってるそう。それは、エイズよりも乳がんよりも多いとのこと。それなのに、メディアではぜんぜん取り上げてももらえないのが現実。今回デニス・クエイドのお子さんが被害にあったのは、ナースがヘパリンという投与薬を大人用と子供用の用量を間違って患者に投与してしまった事でした。そして、その間違いはなんと双方の酷似したラベルから、ナースの判断上の混乱を招いてるのだとか。

『60ミニッツ』番組中、その酷似したラベルが映し出されてますが、確かにフォントサイズは小さいし、同じようなフォントスタイルに、同じような色を使ってあります。投与薬だから瓶は親指ほどの大きさで、そこに全ての情報を記載するには、フォントサイズを小さくせざるおえません。とは言え、色も形も酷似していれば、もちろんラベルの読み間違いが起こるのも当然ですよね。まさに、悪いデザインが人を殺したというわけ。

とりあえず、このヘパリンの製造元であるバクスター社(Baxter International)は、リコールをしてラベルをデザインしなおしたらしいのですが、今だリコール前の在庫が多くの病院に残り使われ続けているのが現実なのだそう。しかも、似たようなラベルの読み間違いによって医療ミスが後を絶たないのだとか。あー、怖い!

さて、そこでふと思ったのが、グラフィックデザイン界、はたまたウェブデザイン界でどれくらい似たような事が起こってるかです。さすがヤコブ博士!3年前に悪いユーザビリティーによって起こる医療ミスのリポートをしています。以下「Jakob Nielsen博士のAlertbox」より要約引用文。詳しくは、直接記事(『医療現場のユーザビリティ:悪しきデザインがいかにして患者を死に至らしめるか』)を参照してください。かなり読み応えあります。

要約:あるフィールドスタディから、自動化された院内システムは22通りの方法で患者に誤った投薬を強いる結果になり得ることがわかった。多くは、何十年も前から既に知られている古典的なユーザビリティ上の問題である。

そうなんですよね。こういったケースは、日常茶飯事なんでしょうね。きっとユーザビリティを軽視してるデザイナーによって、起こりえるんですよ。私も改めて真剣にユーザビリティー、そしてタイポグラフィーのレジビリティー(Legibility: 文字の見やすさ)*を気をつけようと思ったわけです。

【参考】

*レジビリティー(Legibility: 文字の見やすさ): よく耳にするリーダビリティ(readability:読みやすさ)との違いを以下ウィキペディア(“Typography“)より抜粋。

リーダビリティー(Readability: 可読性・読みやすさ)とレジビリティー(Legibility: 文字識別性・見やすさ)は、時に混同されがちである。リーダビリティーは、多くの場合、書き出された言語が読まれ、理解される時にもたらされる容易さに定義される。その言語自体の難解さに定義され、その見かけの難解さではない。リーダビリティを成す要素は、文章や言葉の長さ、そして非凡語の頻出度が含まれる。

それに対して、レジビリティー(Legibility: 文字識別性・見やすさ)はどれだけタイプセットが読みやすいかということである。それは、文章内容や言語とは直結しないが、文字サイズや見かけにかなり関係してる。レジビリティーを成す主な要素は、文字サイズ、文字のデザイン、行間のサイズ、字間、色コントラスト、文章の行頭行末をそろえるか否か、連字符がつくか否かなど。